筋力トレーニングの健康効果②

筋力トレーニングの健康効果のうち、 乳がん、肥満(体重)、疲労(精神疲労)、睡眠について、 紹介しています。
筋力トレーニングの効果一覧、および、病気への効果については、 筋力トレーニングの健康効果①をご参照下さい。


女性の悩み

乳がん

乳がんの発症リスクは女性ホルモンであるエストロゲンと関係しています。

このエストロゲンが増える原因の1つが脂肪細胞ですが (エストロゲンは卵巣以外に、脂肪細胞から作られる)、 筋力トレーニングは「脂肪を減らす」有益な手段の1つです。

アメリカ国立がん研究所が発表した内容によると、 60以上の研究を調査した結果、 「物理的な活動が多い女性は、 座りがちな女性と比較すると、 乳がんを発症するリスクが低い」と発表し、 これは閉経前・後に関わらないほか、 特に青年期では、 活動レベルが高いほど確率が低くなる、と発表しています。

運動の種類としては、 「一日あたり30~60分、 中~高強度の運動が乳がんのリスクの減少と関連している」と述べています。

また、2014年ドイツがん研究センターが発表した内容によると、 「がんに関わる疲労は、 運動によって減少することが多数の研究により報告されているものの、 筋力トレーニングに関わる研究が不足している」と前置きした上で、 その効果を研究したところ、 「12週間の筋力トレーニングにより、 がん関連の疲労、生活の質が有意に改善した」と発表しています。

体重

肥満改善

筋力トレーニングと肥満改善の関係はいささか複雑です。

これは、筋力トレーニングが肥満の改善に効果があるとする研究がある一方、 肥満の改善には効果がないとする研究も多いためです。

ある研究(※1)によると、 48名の子どもたち(平均9.7歳)に 1週間のうち3日、筋力トレーニングを実施させたところ、 筋力トレーニングが肥満の改善(脂肪の減少)に効果がありました。

週3回の筋力トレーニングの効果
体脂肪率 2.6%減少
除脂肪体重 5.3%増加
BMI 変化なし
運動能力の変化 スクワット:74%増加
腕立て伏せ:85%増加
など


一方、別の研究(※2)では、 普段あまり運動をしない119名の人(18歳~70歳、BMI25~35%)を3つのグループに分け、 8ヶ月間調査したところ、 以下のような結果となりました。

3つのグループ
  • 筋トレ・・・週3日、一日3セット、1セット8~12回
  • 有酸素運動・・・最高酸素摂取量の65~80%ペース、約20km/週
  • 組合せ・・・上記の組合せ

有酸素運動と筋力トレーニングの比較
筋トレ 有酸素 組合せ
摂取カロリー 2,009kcal 2,100kcal 2,009kcal
体重 +0.83kg -1.76kg -1.63kg
脂肪率 -0.65% -1.01% -2.04%
脂肪量 -0.26% -1.66% -2.44%
ウエスト -0.06cm -1.01cm -1.66cm
除体脂肪 +1.09kg -0.10kg +0.81kg

これら結果を踏まえ、 「筋力トレーニングは除脂肪体重(LBM)の増加には効果があるが、 脂肪量や総体重を有意に減少させるには、 有酸素運動の方が効果がある」と述べています。

また、組合せ(有酸素運動+筋力トレーニング)は時間が2倍かかるにも関わらず、 それに見合う効果は有酸素運動ほどではなく、 有酸素運動単独の方が、 脂肪量や総体重を減少させるには、効果があると述べています。

ただし、この研究における筋力トレーニングの運動量はわずか3セットであるほか、 見る人によっては数値そのものが改善している(効果がある)ようにも見えるため、 「筋力トレーニングが肥満改善に効果がない」と言い切ることも難しいことかもしれません。

筋力トレーニングとダイエットに関わるさらに詳しい内容については、 筋トレはダイエットに効果的か? をご参照下さい。

参考:
※1:「8週間の筋力トレーニングは太りすぎあるいは肥満児の身体組織に変化をもたらす」
※2:デューク大学メディカルセンター、イーストカロライナ大学(ECU) 「過体重または肥満の成人の体重と脂肪量に好気性および/または筋力トレーニングの効果」

疲労、精神疲労

筋力トレーニングの効果 疲労、精神疲労
うつ病や精神疲労、エネルギーの増加などに筋力トレーニングが効果があります。

ある研究(※1)によると、 老人32名(平均71.3歳)を対象に、 週3回、10週間の筋力トレーニングを実施したところ、 うつ病の指標である「ベック抑うつ評価尺度」や 「ハミルトンうつ病評価尺度」が、 対象と比較して全ての項目で改善しました。

これら結果を踏まえ、 「筋力トレーニングは、効果的な抗うつ薬である」と述べています。

また、1970年から2000年の間に公開された37の研究を調査(※2)したところ、 「身体活動の量が多いほど、一般的にうつ病の症状の低減と関連していた」と発表しており、 この調査において、 「筋力トレーニングと有酸素運動の両方が うつ病の症状の低減と関連していた」と発表しています。

参考:
※1:「うつ病高齢者におけるプログレッシブレジスタンストレーニングのランダム化比較試験」
※2:ダン、アンドレア・Lなど「うつ病や不安の結果に関する身体活動用量応答効果」

その他

筋力トレーニングにより、 睡眠の質が改善します。

ブラジルで行われた研究(※1)によると、 40人の普段座りがちな男性(65-80歳)を 筋力トレーニング(60%強度)と運動なしの2グループに分け、 それぞれの実験前後の睡眠の指標を評価したところ、 「物理的な運動は睡眠の改善にささやかな影響を与えていることを示唆している」 と発表しています。

筋力トレーニングと睡眠
筋トレ群 運動なし群
中途覚醒(睡眠中に目がさめる) 22→20に減少 16→20に増加
入眠(睡眠までの時間) 8.3→6.2に減少 4.9→5.4に増加

参考:
※1:2012年ブラジル・サンパウロ連邦大学「高齢者の睡眠パターンに筋力トレーニングのセッションの効果」


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