トランス脂肪酸とは
トランス脂肪酸とは、脂質(正確には脂肪酸)のうち、 トランス型と言われる脂質の総称です。脂質を大きく分類すると「身体に良い脂肪」と「身体に悪い脂肪」があり、 トランス脂肪酸や飽和脂肪酸(動物性脂肪)はいわゆる「身体に悪い脂肪」に分類されます。
ここでは、トランス脂肪酸の健康リスクと多く含む食品を紹介しています。
トランス脂肪酸とは
参考:農林水産省
トランス脂肪酸は、牛肉、羊肉、牛乳、乳製品など、 自然界にも存在する物質ですが、その量はごく僅かで、 口に入れるトランス脂肪酸の殆どは人工的に作られたトランス脂肪酸です。
このトランス脂肪酸が作られる過程は大きく2種類あり、
- 不飽和脂肪酸(植物油や魚油)に人工的に「水素を添加」することで作られる
- 植物油を精製する工程で、臭いを取り除くために高温で処理する時に作られる
一部のサラダ油など、 精製した植物油にも微量のトランス脂肪酸が含まれますが、 その量はごく僅かです。
トランス脂肪酸の健康リスク
トランス脂肪酸による健康リスクは以下の通りです。
トランス脂肪酸の健康リスク
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その他、冠状動脈性心臓病や糖尿病のリスクを高めることなども指摘されています。
トランス脂肪酸をめぐる海外の動き
トランス脂肪酸による健康被害による影響から、 アメリカおよびヨーロッパ(デンマーク、スイスなど)では、 学校やレストランからトランス脂肪酸を除去、 あるいは制限されるとともに、 食品への表示が義務付けられています。これらの動きは、アメリカ心臓協会が政府(米国農務省や州)に働きかけた結果で、 アメリカ カリフォルニア州(ティブロン)では、 全てのレストランでトランス脂肪酸が完全除去され、 ニューヨークや他の州も追随しています。
日本では
食品中のトランス脂肪酸について、 表示の義務や含有量、摂取量に関する基準値はありません(2015年)。ただし、 脂質に関しては、総脂質、 飽和脂肪酸(動物性脂肪)、 多価不飽和脂肪酸について目標量と目安量が定められています。
海外の摂取量基準
アメリカ心臓協会は、トランス脂肪酸および飽和脂肪酸の摂取基準として、 以下を掲げています。
トランス脂肪酸の摂取量基準
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また、世界保健機関 (WHO) も、 1日あたりのトランス脂肪酸の平均摂取量は、 最大でも総エネルギー摂取量の1%未満(約2グラム未満)と勧告するだけでなく、 このレベルを考え直す必要があるかもしれない、と更なる引き下げを示唆しています。
トランス脂肪酸を多く含む食品
トランス脂肪酸は安価なため、 大量生産が必要な加工食品、中でも以下の食品に多く含まれます。
トランス脂肪酸が多い食べ物
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農林水産省の調査
日本の農林水産省の調査によると、 食品100g中に含まれるトランス脂肪酸が多い食品トップ10は以下の通りです。
トランス脂肪酸が多い食べ物
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※農林水産省が発表している調査対象商品中の最大含有量を「含有量(g)」として順位付けし表示しています。
トランス脂肪酸1%未満とは
トランス脂肪酸の摂取量は、 総カロリーの1%未満とされており、 農林水産省によると、 日本人が一日に消費するエネルギーは平均で約1,900 kcalのため、 平均的な活動量の場合には一人一日当たり約2グラム未満が目標量に相当する、 と発表しており、 上記食品を好む人は注意が必要です。トランス脂肪酸の取り過ぎに注意すべき人
農林水産省が実施した調査研究(2008年)によると、 日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量(一日)は、 0.92~0.96gと推定されます。また、2007年に内閣府の食品安全委員会によると、 0.3~0.6%と報告されています。
しかし、2008年「日本栄養食糧学会誌」に掲載された 20歳前後の女子学生25人を対象にした調査によると、 女子学生25人の平均摂取量は1.2gであったものの、 そのうち3人は、摂取量が高く(2.8~3.3g)、 フライドポテトや菓子パン類が最も寄与した、と発表しています。
同様に、 「Journal of Epidemiology誌(20巻:119-127頁)」では、 30-69歳の男女225人を調査したところ、 男性:1.7g(総エネルギーの0.7%で油脂類が多かった)、 女性:1.7g(総エネルギーの0.8%で菓子類が多かった)とするものの、 一部の人々(男性の5.7%・女性の24.4%)は、 WHOの勧告(最大でも総エネルギーの1%未満に)を上回り、 都市部の30-49歳の女性で特に高かった、と発表しています。
そのため、 女性では、お菓子、パン、 男性では油脂類を多く含む食べ物を好む人は、 トランス脂肪酸の取り過ぎに注意した方が良いかもしれません。