低体温症、低い体温が意味すること
低体温症とは体温の低下により「冷え性」、「易疲労感」など、 生活する上で様々な支障が出る状態です。一方、低体温症は「長寿(アンチエイジング)」に繋がる可能性が指摘され、 低体温症を改善させることに異を唱える医師もいます。
ここでは、低体温症の原因別改善方法のほか、 低体温症について、現在分かっていることを紹介しています。
低体温症とは35℃~36℃の空白区間
医学的に低体温とは、「35℃以下」とされ、 水、氷、外気、出血、糖尿病などが原因となり、生命の危機を脅かす可能性のある各種症状とされています。一方、 一般的な平熱は「36℃以上」とされており、 この空白地帯である体温「35℃~36℃」が、健康面、美容面で注目される「低体温症」と定義されることが多いようです。
低体温症の原因
低体温症の原因は非常に多いものの、 多くの人の原因となる要素は「運動不足」と「カロリー制限」です。
低体温の原因
■運動
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運動不足で基礎体温はどんどん下がっていく
運動不足は基礎体温を低下させます。これは運動中あるいは運動後の一時的な発熱効果が不足すること以外に、 「筋肉量の低下」と「血流の悪化」によるものです。
この運動による基礎体温の低下については、 運動と美容効果をご参照下さい。
長期のカロリー制限は基礎体温を低下させる
カロリー制限と基礎体温に関わる研究は非常に盛んで、 特にアンチエイジング分野において様々な研究が行われています。論文「アカゲザルにおけるカロリー制限(以下略)」では、 6年の間、30%カロリーを制限することで、およそ 0.5℃基礎体温が低下した、と報告されています。
また、2.5歳のサルに1ヶ月だけ30%カロリーを制限したところ、 皮下体温(深部体温とは異なる、ここでは手足と思われる)が約1℃低下しました。
また、アメリカ ワシントン大学が発表した論文「長期のカロリー制限(運動なし)は、人間の中核温度を低下させる」では、 人で同様の実験が行われ、カロリーを制限したグループは体重と中核体温が他のグループと比較して有意に減少していました(以下表ご参照)。
カロリー制限と体温
総摂取カロリー | 中核体温 | 体型 | |
カロリー制限グループ | 1,769±348kcal | 最も低くなった | スリム化した |
座りがちなグループ | 2,302±668kcal | - | - |
運動グループ | 2,798±760kcal | - | スリム化した |
特に若い女性は、日頃からダイエットを目的としたカロリー制限を行う人が多いため、 基礎体温が低下しやすい環境を自ら作っている可能性があります。
病気
低体温に関わる病気は複数あるものの、 特に女性に多い病気が甲状腺機能低下症です。甲状腺ホルモンは「身体を元気にするホルモン」、「エネルギーを作り出す臓器」と言われるように、 このホルモンの分泌が低下すると、低体温症と体温の低下に伴う乾燥肌になります。
米国科学アカデミー(NAS)に発表された論文によると、 甲状腺ホルモンの分泌が低下したマウスでは、 血管の収縮を調整することができず、 必要以上の熱が身体から奪われるため低体温になる、と発表しています。
甲状腺機能低下症の詳細については、 甲状腺機能低下症をご参照下さい。
その他
血流を阻害する「圧迫感のある下着」のほか、 「喫煙」や「アルコール」も基礎体温を低下させます。 その他、「入浴」は血流改善効果があるため、 シャワーだけですます生活が続くと、 低体温の原因となります。詳しくは以下をご参照下さい。
低体温とアンチエイジング
低体温は冷え性や疲労、易疲労感など、様々な問題を引き起こすものの、 アンチエイジングの分野では、低体温が注目され、 低体温そのものを「悪」とすることを疑問視する医師もいます。残念ながら、この論争は未だ解決していないものの、 現在分かっていることは以下の通りです。
低体温の視点から
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消費カロリーの視点から
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アンチエイジング、ダイエット、生活など、総合的な視点で捉えた場合、 最も良い選択肢は「体温を上げ、かつ、カロリーを制限する」ことですが、 完全な両立は、上記の通り矛盾してしまいます。
個人の選択
アンチエイジング薬などの選択肢がない(様々な研究機関が既に開発を進めていますが)、 現在の限られた選択肢では、 「生活」を優先するか「長寿(可能性)」を優先するか、 ご自身の選択が重要になっています。また、どちらか一方のみを完全に優先する考え方ではなく、 運動はウォーキングなど軽めにして、低体温にならないようにしながら、 食事によるカロリーは標準カロリーよりほんの少し抑えるなど、 個人の意思・嗜好が反映されることが大事です。