クルクミンと副作用

クルクミンは一部において、その副作用(を引き起こす可能性)が指摘されています。

このクルクミンによる副作用は、 頭痛や腹痛といった多くの栄養素に共通する副作用以外に、 過剰摂取によって、DNA損傷、赤血球数の低下などが指摘されています。

一方、クルクミンは古くから伝統医療に用いられていることや、 現在でも世界中で食品添加物やサプリメント(ウコンを含む)として用いられていること、 さらに多くの人々がウコン(ターメリック)の黄色成分として、 カレーなどで摂取する機会も多く、安全性に関わる評価試験も多数行われています。

ここでは、 クルクミンの副作用、リスクの可能性について紹介しています。


クルクミンの副作用と安全性

クルクミンの肯定的な効果を示す研究の数は、 副作用、マイナスを示す研究よりも圧倒的に多く存在します(※以下説明あり、UICCの発表より)。

一方、数多くのヒト臨床試験が現在進行形で実施されている経緯から、 その副作用、マイナスの可能性に注目し、研究したのが 「アメリカ国家毒性プログラム」と「UICC(国際対ガン連合)」です。

アメリカ国家毒性プログラム

アメリカで食品添加物を含め、 農業、医薬化粧品などに関わる毒性と発がん性について評価する機関が、以下の条件を用いて、 クルクミン(正確にはウコンオレオレジン)について評価しています。

ウコンオレオレジン(クルクミン)の安全性評価
■評価条件
  • 13週間(短期)と15か月(長期)の2種類で試験
  • 濃度(摂取量)は4種類。2,000、5,000、10,000、50,000ppm(体重1kgあたり80mg~2,800mg程度、体重60kgの場合4.8g~168gの摂取量となる)
  • 2種類のマウス(F344/N、B6C3F1)を利用


■証拠なしとされたもの
  • ウコンオレオレジンの発がん性の証拠はなかった
■あいまいとされたもの(※1)
  • 陰核腺腺腫の発生率増加(2,000ppm、女性マウスのみ)
  • 肝細胞腺腫の発生率がわずかに増加(5,000と10,000ppm、男性マウスのみ)
  • 小腸の癌の発生(2,000~10,000ppm、男性マウスのみ)
■関連ありとされたもの(※2)
  • 胃の潰瘍、過形成、角質増殖、盲腸および結腸の炎症(50,000ppm、男性マウスのみ)
  • 盲腸(50,000ppm、女性マウスのみ)
  • 甲状腺濾胞細胞過形成の発生率の増加(50,000ppm、女性マウスのみ)


詳細
※1:
ある特定の条件(例:2,000ppm)で発生したが、 他の濃度(例:5,000、10,000、50,000)、特に50,000ppmでは観察されなかった(発生率0)ため、 その発生が原因物質によるものか不明であると判断されたもの

※2:
50,000ppm(体重60kgの場合156g~168g摂取量に相当)において、 有意な増加が認められたもの

その他、50,000ppm(体重60kgの場合156g~168g摂取量に相当)において、 ヘマトクリット値、ヘマトクリット値、ヘモグロビン濃度、赤血球数の有意な低下、 血小板数、網状赤血球数の有意な増加が観察されています。

UICC(国際対ガン連合)

UICC(国際対ガン連合)がクルクミンの副作用、リスクをまとめた「クルクミンのダークサイド」という手記によると、 クルクミンの肯定的な効果を示す研究の数は、 副作用、マイナスを示す研究よりも圧倒的に多く存在すると前置きした上で、 クルクミンの評価をバランスさせることを目的として、 クルクミンが健康に効果的でない理由と、 安全でない可能性について、以下の様に言及しています。

クルクミンの効果・安全性の対する負の面
■効果的でない理由
  • クルクミンは体内で高濃度を維持できない(腸内代謝率が高いため)
  • クルクミンではガン細胞はしなない(ただし、腸管吸収を必要としない結腸癌、大腸癌には効果あり)
■安全性に疑問が残る理由
  • 特定の条件下ではDNA変異、染色体異常につながる
  • 体内濃度が濃すぎると、活性酸素を増加させる(低い場合は活性酸素の低下につながる)
  • 副作用として、鉄キレート剤、代謝酵素阻害が確認されている

摂取量として、8gまでは完全に無害ではないものの、 短期毒性を生じないことが認められており、 この用量が予防薬、治療薬の開発のための試験に適しているとしています。

また、(カレーやスパイスとして)クルクミンの摂取量が多いインドにおいて、 消化器癌の発生率が低いことに注目し、 0.15g(150mg)/日程度がWHO(世界保健機関)が推奨する摂取量と同様で適切であると述べています。

各国のクルクミンに対する評価

多くの国でクルクミンは「食品添加物」として利用されています。

そのため、クルクミンの安全性に対して評価が行われ、安全とされていますが、 他の栄養素同様、「摂取量上限」が決められています。

日本(厚生労働省)

クルクミンは日本では「食品添加物」として認められており、 既存添加物の番号35「ウコン色素」、別名/品名「クルクミン、ターメリック色素」、 用途「着色料」として登録されています。

このクルクミンに対する安全評価は、 日本において広く使用されている、 古くから長い食経験がある添加物である「既存添加物」として登録されています。(※1)

参考:
※1:厚生労働省「食品添加物リスト」

欧州食品安全機関(EFSA)

日本同様、ヨーロッパにおいても、 クルクミンは食品添加物として利用されています(※1)。

この評価は、 FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)と食品に関するEU科学委員会(SCF)によって評価されているほか、 2010年には追加評価として、新たに クルクミンに発癌(ガン)性がないことについて、JECFAで合意しています。

この欧州食品安全機関(EFSA)による 1日許容摂取量は0~3mg/日/kg(体重60kgの場合0~180mg)です。

ただし、欧州の一部の子供において、 1日許容摂取量を超えていることに、注意を喚起しています。

参考:
※1:2010年 EFSA「食品としてのクルクミン(E100)の再評価に関する科学的意見」

アメリカ食品医薬品局(FDA)

クルクミンはアメリカでも同様に、食品添加物として認められており(※1)、 食品添加物に与えられる安全基準合格証(GRAS:Generally Recognized as Safe:一般に安全と認められる)が与えられています。

このクルクミンは、 食品において、香味剤あるいは抗酸化剤として、 一食あたり、最大20mgに設定されています。

ただし、赤ちゃんあるいは乳幼児用品の使用には、 クルクミンの利用は意図されていません。

また、1日許容摂取量はヨーロッパ同様、 0~3mg/日/kg(体重60kgの場合0~180mg)となっています。

参考:
※1:2013年 アメリカ食品医薬品局

クルクミンの副作用・安全性に対するまとめ

欧州食品安全機関(EFSA)、アメリカ食品医薬品局(FDA)、WHO(世界保健機関)、 UICC(国際対ガン連合)などによると、 1日150mg~180mg以内の摂取量は安全と評価されています。

また、クルクミンの摂取量が最も多いインドでさえ、 1日平均摂取量はわずか150mg(0.15g)程度のため、 食品添加物(マスタードやたくわん)やカレー、スパイスとして摂取する限り、 安全と言えそうです。

ただし、 海外ではクルクミン100%のサプリメントが一般販売されており、 これらサプリメントには、 安全基準の10倍以上のクルクミン(1,500mg)が含まれます。

UICC(国際対ガン連合)の見解を見る限り、 摂取量8gまでは短期毒性を生じないと考えられているものの、 摂取量が多い場合は、上記副作用が発生する確率が上がるため、 サプリメントなどで意図的に摂取する場合は摂取量に十分注意するとともに、 健康面だけでなく、そのリスク、副作用に対して、十分な理解と注意が必要です。


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